発熱の原因を見極めて正しい対応を
風邪の引き始めに発熱を訴える方がいます。
同時にゾクゾク・ざわざわと悪寒・悪風を感じるので 「これは風邪をひいたな」 とわかります。
一方で風邪でもなく悪寒なども感じない、37.2°くらいの微熱が続く場合があります。
風邪以外の要因で微熱が長期間継続して出てくる場合、解熱剤では症状改善が出来ないことが多く、その時のトラブルに対応した処置を考える必要があります。
中医学的に微熱が続くトラブルはいくつかあります。
一つは「気虚=体力をとても消耗してしまっている場合」。
ボクシングやプロレス、オリンピックなど大舞台で活躍した選手が試合の後で熱を出す事が時々あるとお聞きします。
また大手術などで大量の出血をした事で消耗し、後で発熱する事もあります。
これらの発熱は一時的に著しく体力を消耗してしまったために生じる「気虚発熱」といわれる熱です。
風邪の熱ではありませんから解熱剤などを服用してももちろん熱は下がりません。
気虚発熱の場合、微熱の他にも「少し動いただけで汗が出る」「中々汗がひかず体が冷える」「倦怠感を強く感じる」などの特徴があります。
気虚発熱を改善するにはその名前の通り「気を補う」必要があります。
気虚の状態が続くと、感染症にかかりやすくなったり場合によっては肺炎などを併発して重症化したりすることもあります。
なるべく早い段階で発熱の原因に気づいてほしいものと思います。
気虚発熱以外にも店頭でよく見る微熱に「陰虚潮熱(いんきょちょうねつ)」があります。陰虚とは「体の水分が相当に減少している」状態です。
陰虚潮熱は体に必要な水分 「陰」 が不足したために生じた、一種の熱代謝異常です。
車でたとえれば冷却水の不足により、エンジンやブレーキの熱を抑えられなくなった状態です。
全身の秦理=汗腺からは絶えず微量の汗が放出され、同時に体内の過剰な熱を少しずつ外に放散しています。
陰虚の方ではこの 「汗で少しずつ外に熱を放散する働き」 が低下してくるのです。
結果、少しずつ体内に熱が蓄積し上半身がほてり始めます。
ある程度まで熱が蓄積されると主に胸や首、顔面や頭部など上半身の一部から著しく汗をだし、熱を放散します。
熱を放散できると急に楽になりますが、活動していればまた熱が蓄積し、一気に汗で放散する。
まるで海の潮の満ち干きの様に、ほてり・微熱感が出てくる様子から 「潮熱」 とよばれています。
陰虚潮熱では、陰を補う事で状態改善を図ります。
しかしそもそも陰虚の状態になっている方は、体の潤いを作るための水分代謝にも異常をきたしている事が多く、この水分不足を 「水を飲む・水分を取る」という行為だけでは改善できません。
逆に水分を取りすぎると元からある水分代謝異常から 「むくみがひどくなる」 「お腹がポチャポチャして食欲がなくなる」 「体が冷えていっそう元気がなくなる」 などの併害を生じかねませんので絶対にやめてください。
どちらにせよ、これらのトラブルから生じる微熱は風邪薬や解熱薬では治療はできません。放置しておいても良い状態ではなく、正しく対応できれば早期改善することも可能です。
体が弱ってきた方や、普段元気に見えますが、喉の渇きや肌の乾燥を良く訴え、のぼせや寝汗を感じやすい方は、微熱が出たときには一度これらの原因を疑ってみてほしいと思います。
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