“冷え症”はタイプに合わせて改善方法を選択
(この記事は過去のコラム「冷えの改善」を修正したものです。)
まだまだ寒い季節が続きそうですね。
2017年に入ってから漢方薬をテーマにしたテレビ番組が頻繁に流れるようになりました。
私自身は見ていませんが、先日は冷え性に対して「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」が紹介されていたということで、店頭でもお問い合わせを連日頂きました。
テレビではあたかも冷えに対する万能薬のように紹介されたと聞いておりますが、漢方をそんな紹介の仕方しか出来ない医師やテレビ局は即刻活動をやめて欲しいと思います。
漢方薬は主に治療を目的に体に入る“お薬”の一つです。
そして当HP内にも何回も記載していますが、私は“誰も彼もがこのお薬を飲めばOKなんてお薬”はないと考えています。
悩んでいる症状を改善する為には、症状を起こしている原因=生活習慣の乱れやそこから生じた体質的な過不足を見つけ、原因そのものを改善できる漢方薬と、誤った生活習慣を改善指導できる知識・知恵が必要です。
やたらとテレビで紹介されているから、有名なお医者様が言っているものだからと鵜呑みにするのはやめてくださいね。
まず「冷え」の漢方的な捉え方は一つだけではありません。
代表的なものは“血虚” “気虚(陽虚)” “気滞” “寒” “血オ”…他にも特殊な冷えのパターンがいくつかあります。
女性に圧倒的に多いのは“血虚”と“寒”から生じる冷え性です。
“血虚(けっきょ)”とは「血の絶対量の不足」です。
血液は体の中で潤いと栄養、そして体温を末端隅々まで運ぶ働きがあります。
血液が不足すると体温を末端まで運ぶ力が弱くなるため、末端冷え性が生じ、栄養も運べないので指先や爪がひび割れし、肌の乾燥も起こってきます。
血液は全身の細胞に栄養を運び酸素を供給し、恒常性の維持にも一役買っています。
中医学で言う血(けつ)の不足では、この恒常性の破綻も症状の一つとして数えられ、不眠やめまい、頭痛なども起きると考えています。
オフロに入ったり布団で暖まったりすれば症状は改善しますが、疲れたり寒いところに長くいると冷えが悪化し長引くこともあります。
上記の冷えは体の正常な維持に必要な要素が不足を起こした虚証タイプの冷えです。
一方で、“寒(かん)”とは、季節的な寒さやエアコンの冷風などを局所に受ける事で“寒邪”という体に悪影響を与えるものが身体の各所に張り付いてしまったもの、侵入してしまったものです。
いわば悪いものが体に入ってきてしまった状態で、邪実(じゃじつ)症と言われています。
例えば風邪をひくと背筋がゾクゾクし、布団に入ってもオフロに入っても続々した部分は温まらないという経験をした方もいらっしゃると思います。
これはゾクゾクする部位に“寒邪”が張り付いてしまった状態です。
氷袋を背負っているようなもので、原因となっている“寒邪=氷袋”を取り除かないといくら外から温めても中々温まることはありません。
葛根湯は体を内側から温め、この寒邪を汗をかかせて取り除くことで風邪の症状の改善をしています。
寒邪が張り付く、あるいは侵入する部位により様々な冷え性が起こります。
手首や腰・膝などの関節に取り付けば重だるいような痛みとひどく冷たいと感じる症状になり、寒いと悪化します。
ふくらはぎなど末端に張り付けば末端の冷えになり、オフロに入ってもそこだけ中々温まらず、夜間にはこむら返りを起こす方もいらっしゃいます。
女性の場合、子宮に寒邪が入れば冷え・のぼせや不眠、イライラ、ひどい生理痛やゆるい便通など自律神経失調にも似たような症状が併発して現れることもあります。
それぞれ入った部位や程度、出ている症状で漢方薬は変わってきますので一概にこれを飲めば大丈夫とはいえません。
そういった見極めをするために私達のような漢方薬局、漢方のエキスパートがいるものと考えています。
テレビをみて「漢方薬という手があった」と考えて頂くきっかけになれば大変ありがたいと思いますが、くれぐれも番組内で紹介された処方を鵜呑みに試すことは控えて頂きたいと思います。
お困りの方はお気軽に近くの漢方薬局でぜひ一度ご相談してみて下さい。
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